占い師の怪談⑨

数ヶ月前のことです。

 

電車を降り、改札から出た時、地下の雑踏の中を、若い女性がこちらを向いて立っているのが見えました。

 

かなり距離がありましたが、まず目立ったのはその形相です。

恨みや怨念を凝縮させたような、言葉に出来ないほどの目つきで、一瞬、

(ホラー映画の撮影でもしているのかな?)

と思ったほどです。

実は、「撮影かな」と思ったのには、他にも理由がありました。

 

南国にいるような女性のラフな服装と、(長袖の季節でした)女性の顔がとても端正で、体つきも細くてモデルさんのようだったこと。

睨みつける形相はまさに「迫真の演技!」という言葉が浮かぶほど、ゾワッとさせるものだったこと。

そして何より、女性の周囲がライトアップされたように白く光って見えていたからです。

だから、地下の改札から出た時、すぐに視野に入ったのでした。

 

私とは目は合わなかったので、見ているのは私の背後。一点を睨んでいる感じがしました。

 

不思議だったのは、女性の前後を、何事もないように人が通り過ぎることです。

 

とにかく、その顔があまりに恐ろしいので、私は足早に通り過ぎました。

 

でも‥‥地下街を出た後、ふいに気づいたのです。

遠近がおかしいことに。

ライトアップされたようだったから目立ったのもありますが、確かに遠近がおかしい。

女性の背が高すぎる感じがしたのです。

 

もちろん、もう一度確認する為に戻ろうとは、決して思いませんでしたが。