本当にこんなことってあるんですね。
まだ10代の頃の経験です。
日曜日、友人5人で、遠くの公園に遊びに行きました。
公園といっても、ブランコやすべり台があるごく普通の公園ではなく、
ボートに乗ることが出来る大きな池や、ドッチボールやバトミントンが出来る広場がある広大な公園です。
すぐそばには、これまた大きな墓地があって、
都市伝説で、タクシー運転手さんが深夜にこの辺りで幽霊を乗せるらしい、と、囁かれていました。
しかしそんなことは10代の若者には関係ありません。
ドッチボールをしたり、2人1組でボートを楽しんだ後、みんなで連れ立ってトイレに行きました。
日曜日で、しかもお天気もよいので、お客さんが多く、トイレは混み合っていました。
私が並んでいる隣りの列には、喪服姿の女性が並んでいました。
黒っぽい帽子を深々とかぶり、顔はよく見えません。ほっそりして背が高く、美人っぽい印象はありました。
そばに墓地があるので、喪服でも気になりません。
長い順番を並び、やっと私の番が来て、用を足して外に出て来ると、私の隣りの列では、友人の1人が困ったような顔をして、まだ待っていました。
「あれ? まだなんだ」
「女の人、出てこないのよ」
と、私に向かって答えたのは友人ではなく、友人の前で待っていた中年女性でした。
しびれを切らせたのか、女性は力まかせにトイレのドアを叩き、その勢いでドアがギィーと開いたのです。
中には誰もいませんでした。
私たちは顔を見合わせて、何度もトイレを覗き込みました。
人が外に出られるような大きな窓でなかったことは言うまでもありません。
そのトイレに友人が入ったかどうかは‥‥覚えていません。