占い師の怪談⑦

幽霊に腕を引っ張られた経験があります。

⑥で書いた貸家に住んでいた時のこと。

 

その家では、深夜、布団から手足を外に出して眠っていると、かなりの確率で金縛りに合ったので、意識的に手足を折りたたむようにして眠るクセがついていました。

 

試験期間中だったと記憶しています。

 

こたつテーブルで勉強していた私は、そのまま仰向けになって、いつのまにか眠ってしまったようでした。

 

フッと目覚めたのは深夜です。

両手が出ているのに気づいて、(寒い)と感じたのと同時に、(やばい)と思いました。

こんな寝方では、確実に金縛りに合うからです。

両手をこたつに入れようとしましたが、動きません。

(来たか‥‥)

私は覚悟しました。金縛りは一旦起こってしまうと抗うのは困難で、解けるまで、待つしかないと観念したのです。

すると、いきなり私の両手首が、強い力で掴まれました。そんな経験は初めてでした。

巻きつくような細い指で、その一本一本が、手首に食い込むのがわかりました。

私はすごい力でこたつから引きずり出され、そのまま宙に引っ張り上げられました。

怖くて目が開けられません。

遠くで激しい太鼓の音が聞こえるのがわかりました。

急に私の視野に、鎧をまとい、馬に乗った武者たちが、闘う姿が映像のように広がりました。縦長の旗がゆらめいています。

急に、男性とも女性ともつかない声が頭に入ってきました。

「おまえの先祖で、〇〇という名前だ。17の時に死んだ」

というような内容でした。

何のことかわかりません。

 

やがて、両腕が動くようになったので、私は手を振り解いてこたつにもぐりこみました。恐る恐る首だけ出して部屋を見回しました。しかし、いつもの部屋が見えるだけで、何の変化もありませんでした。

ただ、細い指が手首に食い込んだ感触だけは残っていました。

 

ごく最近になって、伯父や伯母や従兄弟たちが立て続けに亡くなりました。

納骨の時、年嵩の上の従兄弟がポツンと言った一言が耳に残りました。

「平家の落武者で、毛利に助けられて何とか生き延びたんだ」