占い師の怪談⑩

新婚当初、最初に住んだアパートには幽霊が出ました。

 

何でそんな所を選んだのかって?

 

2階建ての白くて可愛いアパートだったんですよ。

 

私たちの部屋は2階で、玄関から入ったところに小窓があって、とてもオシャレな感じに見えました。

 

大家さんはご高齢の婦人で、そのお屋敷の敷地にアパートは建てられていて、

毎月、そのお屋敷にお家賃を払いに行っていました。

最初にあれ?と思ったのは、お屋敷の窓という窓に鉄格子がはまっていたことと、2階のどの部屋もカーテンでおおわれていたこと。

 

広い敷地なのに、暗くてジメッとしていたことです。

 

ある夜、深夜に目覚めた私は、暗闇の中、足元に女の子が立っているのに気づきました。

頭にずきんをかぶった、花売り娘のような格好の女の子で、顔や手は見えません。

 

最初は見間違いかな、と、何度も目をこすり見直しましたが、やはり女の子です。

 

怖いので、(見なかったことにしょう)と、布団に潜り込みました。

でも、それだけでは済まなかったんです。

 

何日かして、また夜中に目を覚ます時があり、

足元を見ると今度は黒っぽいラメのドレスを着た女性が立って、腕をゆらゆら揺らしていました。

(またか‥‥)

 

私はガッカリしました。

 

おそらく『霊道』というものなのでしょう。

これでは、おちおち夜中にトイレも行けないではないですか。

 

結局、そのアパートは半年足らずで出ることになりました。

幽霊も怖かったですが、何より家賃が高かったんです。二十代の夫婦にとっては。