占い師の怪談⑥

みなさん、金縛りに合ったことがありますか?

医学的には、「身体の筋肉が弛緩した状態で、脳が目覚めた時に起こる現象」とかって言われますが、

私にとってとても不思議なのが、「金縛り」がいつも特定の場所で起こっていたことなんです。

そしてその場所は、目覚めている時であっても、

電気を消して暗くすると、白い煙のようなものが漂っていることがある、ということなんです。

 

家族で引っ越した、新築の貸家でのことです。

周囲には大きな工場があって、日当たりは悪くないのに、ジメッとした印象がある場所でした。

私の部屋は一階で、東向きでしたが、どこか薄暗い部屋でした。

 

私は当時中学生で、その場所に引っ越してからというもの、深夜に何度か、激しい頭痛に襲われることがありました。

 

それはもう本当に痛くて苦しくて、頭の中を棒でかき回されているような感じでした。

 

ある夜、突然、いつもとは頭を上下逆向きにして寝ようと思いつきました。

なぜだかわからないけれど、ふいにです。

 

逆向きに横になって、頭があったであろう場所に目を向けると、白いモヤのようなものが、暗闇にゆっくり漂っているのが見えました。

(何だろう‥?)

当時は生理も重く、貧血もあったので、そのようなものが見えているのだろうと思っていました。

 

ところが、その白いものは、みるみる固まって、大きな顔になって行ったのです。

それは、丸髷を結った老女の顔でした。

 

私はもう怖くなって、布団に潜り込み、無理矢理目を閉じて眠りました。

 

それからです。金縛りが毎晩のように起こり始めたのは。

 

あの家には、2年ほど住みましたが、本当に苦しい2年間でした。憂うつになって、学校に行く気力さえも無くなりそうでした。

これではいけないと思い、最後の半年は、出来るだけ家には帰らず、長い時間、図書館とか、ドーナツ屋さんで勉強することにしましたが、

 

もし、ずっとその家にいたら、外に出られなくなっていたような気がするのです。

実際、昼間でも、自分の部屋の雨戸を閉め切らずにはいられなかったのですから。