死神を見たことがあります。
なぜ死神だとわかったかと言うと、それ以外には見えなかったから。(すみません、曖昧で)
場所は駅近の某コーヒーチェーン店の中。
コーヒーを買って座席に座ったら、斜め前の座席に奇妙な風体の男性が座っていたのです。
頭は薄くて、年齢不詳。50歳くらいにも見えるし、80歳くらいにも見えなくもない。着物を加工したような不思議な身なりで、どこか、妖怪の「子泣き爺」に似ていました。
目はギョロッとして、瞬きもせず真っ直ぐ前を見据え、ポップコーンに似た菓子を、黙々と口に運んでいました。
感情のない、とても異様な表情でした。
突然、心に、
「やばい‥」
という言葉が湧き上がりました。
「やばい」「やばい」「やばい」
アラートが心の中に鳴り響く感じでした。私は慌ててコーヒーを持ったまま、外に飛び出しました。
それから1週間後。
私は仕事場のそばの、某チェーン店で、前とは別の支店にいました。
仕事の時間には、まだ間があったので、一人でお茶しよう、と、入ったのです。
コーヒーを買って席にすわると、
(そういえば‥)
と、1週間前のことが頭に蘇りました。
(○○駅のコーヒー店に、とても奇妙な風体の人でがいたのよね‥)
その時です。ふいに、ゾワッとしたんです。
本当にゾワッと。
(まさか)
私は、ゆっくり首を捻って、隣りの席を見ました。
(絶対にそんなはずはない。絶対にそんなはずは‥)
そうしたら‥いたんです。
1週間前と同じ出立ちのまま、(お店の場所は全然違うんですよ!)
1週間前と同じ菓子を口に運び、(こんなことって、あるんでしょうか?)
1週間前と同じように、ギョロッと真ん前を見据えて、
私のまどなりに座っていたんです。
その時、はっきりわかりました。
「これはこの世の者では無い。絶対に目を合わせてはいけない‥」
私がコーヒーも飲まず、そのまま席を立ったのは言うまでもありません。
あれから何年も経ちますが、私の身の回りにはこれと言って変化はありません。
ただ、私の仕事先に、時々現れていた若者が、あの後、突然亡くなりました。
関係ないとは思いますが。